新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関連して現在分かっていることと一人一人ができる対策:第二十六報告(ワクチン接種時の逆血なし確認の有用性)
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関連して現在分かっていることと一人一人ができる対策:第二十六報告(ワクチン接種時の逆血なし確認の有用性)
日頃の診療中や電話相談中にほぼ毎日患者さんから受けるCOVID-19関連の質問に沿って、皆さんに正確にお伝えしたい情報について、最前線の臨床医の一人として、今後しばらく院長ブログのシリーズでお伝えしたいと思います。
質問26 : 我が国で本年2月中旬から開始された新型コロナワクチン接種後のアナフィラキシー反応は、欧米諸国と比較して日本国内で発生率が高いと報告されていますが、本ワクチン接種を安全に受けるために現時点で個々人ができることには何がありますか?
解答の1例:本日3月9日時点での厚生労働省からの報告によれば、現在使用中のファイザー社製新型コロナワクチン接種後のアナフィラキシー反応は、米国で100万人あたり11名に対し、日本では約10万8千人あたり17名(100万人あたり157名相当)で全員女性でした。(最新の専門家部会評価による国内報告では、3月21日までの時点で約57万8千人あたり47名(内男性3名)(100万人あたり81名相当)で、4月4日までの時点で109万6698人あたり79名(内男性8名)(100万人あたり72名相当)でした。)この結果からは、以下のような関連する医療情報をよく理解し、できればワクチン接種前に循環器系の精密検査(血液凝固系を含む)等を受けた上で、「かかりつけ医」と相談しながら、個々人の状態に合わせて安全で具体的なワクチン接種の方法や接種場所の予定を確認して、最終的には本人が決定する任意接種では「接種時に血液の逆流(逆血)ないことを確認して欲しい」との意思を伝えておくことはとても重要です。
なお、本ワクチンの1回目の接種後にアナフィラキシー反応を起こした方々は、基本的に2回目の接種はできなくなりますので、その後にもし新型コロナウイルス感染症(COVID-19)にかかった場合には、抗体依存性感染増強(ADE)などの重症化リスクが高くなることにも注意が必要と思われます。
「かかりつけ医」がいないなどでお困りの方は、当院の診療時間内の午前または午後の最後30分は、さまざまな特別個別診療しながら、いろいろな電話相談の時間としていますので、どうぞご利用ください。
関連する医療情報:まず日本国内で一般的なインフルエンザワクチン接種などで行われている皮下注射と異なり、今回の新型コロナワクチン接種は筋肉内注射で行われていることに注意が必要です。
すなわち挿絵の通り、筋肉内血流は皮下脂肪組織と比較して格段に多いため、深く注射するほど血管内に入る確率は高くなります。しかし静脈注射可能な薬剤以外は、一般的に血管内に直接入ると急激な作用で循環器系変動リスクが高まるため、血液の逆流(逆血)ないことを確認することは必須とされています。
次に一般的な欧米諸国人と比べて、日本人は皮下組織、筋肉組織ともに比較的少ない人が多く、特に女性や高齢者ではその傾向が強いです。そのため同じ注射針で同じ深さまで差し入れると血管に当たる場合が多くなり、アナフィラキシーなどの薬物アレルギーの発生リスクは高くなります。
したがって、これまでのインフルエンザワクチン接種などを毎年安全に受けていた方々で、様々なアレルギー、喘息やじんましんなどを何も経験していない場合でも、今回の新型コロナワクチン接種では細心の注意をして受けることが最良と思われます。
以下に参考として、現場の看護師たちの間で交わされた逆血確認の意義についての最新の質疑・応答の報告を掲載します。
質問:インスリン皮下注射を行う際に、逆血の確認はした方がよいのでしょうか?さらにインスリン専用シリンジでインスリン皮下注射を行う場合も、通常の皮下注射と同様に内筒を引き、血液の逆流(逆血)を確認してもよいのでしょうか?静脈に穿刺していないか確認するのは大事だと思うのですが、念のため確認させていただきたいです。
回答:基本的に逆血確認は必要です。皮下組織にも微小血管が存在するため、血管内に針が迷入した状態でインスリンを投薬すると、思わぬ低血糖を起こす可能性があります。このように、通常における微量の筋肉注射や皮下注射だけでなく、インスリン専用のシリンジを使用した場合でも逆血確認を実施する方が適切であり、リスクが低いと考えます。
(日経メディカル Aナーシング「教えて!ハテナース」2021/02/08より)